参考:【新築vs中古の真実】
「新築vs中古」では、最新の設備を新築住宅の魅力としてアピールする記事をよく見かける。しかし、新しい設備機器を理由に新築住宅を選択するとしたら、私は最もバカげた選択だと思う。
一般の方はあまり意識することがないが、住宅は、スケルトンと言われる構造躯体に、インフィルと呼ばれる内装部分が挿入されて住空間が出来ている。そして重要なのは、マンションでも一戸建てでも、古くなって汚れや老朽化が目立つインフィルは全て刷新することが出来るということである。それを実現する技術が、最近注目されているリノベーションである。
下の写真が、中古マンションをスケルトンまで解体し、そこに新しいインフィルを作りなおしたリノベーションの典型的事例である。
構造躯体は中古だが、身体に触れる可能性のある部分は全て新品だ。フローリングは新築分譲住宅で一般的な複合フローリングや木目を印刷しただけのシートフローリングではなく、無垢材をパーケット貼りにしている。キッチンやバスルームなどの設備機器は全て、住まい手のニーズに合わせて選ばれる。施主のオーダーメイドで作られるリノベーションでは、平均的な新築分譲住宅では望むべくもないような高級な設備が奢られることも珍しくない。
そもそも設備機器メーカーにとって最も利益率が高い上位モデルの新製品が、価格を抑えるために大量仕入れされる新築分譲住宅に採用されることはない。高付加価値型の製品は、注文住宅やリフォームの市場を意識して開発されているのだ。億ションのような超高額物件ならいざ知らず、そこそこの価格の物件には、そこそこのグレードの設備しか入らないと知るべきである。
繰り返しになるが、中古住宅のインフィルは全て取り替えが出来る。例えば、築30年の中古マンションに住む年収500万円の独身の若者が、億ションに住む億万長者よりも広く豪華なバスルームを手に入れることも可能なのだ。お料理が好きなら、予算と面積を思い切ってキッチンに振り分けることも出来る。
設備機器は新築住宅のメリットでもなんでもない。むしろ、ディメリットですらあると私は思う。
ここで立ち戻って考えたいのは、未入居であるという新築の価値である。言い換えると、どこまでが新品なら自分は気持よくその家に暮らせるのだろうか。リノベーションでインフィルをそっくり入れ替えたとしたら、それは未入居と同じではないかということだ。
いやいや。目に見えても見えなくても、触れることが出来ようと出来まいと、家を買うなら、とにもかくにも建築物のすべての部分が新品でなければ許せない。そのように新築を志向する/中古を拒否する人には、私がこれ以上お話することはあまりない。こういった選択は理性や理屈による判断ではなく、何か信仰に近い価値観であろう。それを否定する権利は誰にもない。
ただし、分譲マンションの場合、スケルトン部分は共有部にあたるので、いくら新品未使用にこだわったところで、個人の所有物ではないことは付け加えておこう。
オピニオンリーダー]LIFULL HOME’S総研所長
クレド鷹.nakamine